新規事業の立ち上げ、基幹システムの入れ替え、営業の仕組みづくり、幹部採用と、今期中に動かすと決めた案件が並んでいます。それぞれに担当を置き、週に一度は進捗会議もしています。それなのに、全部が少しずつ遅れています。誰かがさぼっているわけではありません。むしろ全員が忙しく、会議では毎回「調整中です」「来週には目処が立ちます」という報告が続きます。
この状態で出てくる打ち手が、PMOの導入です。ただ、置いてから半年たっても遅れが変わらない、という話は珍しくありません。PMOが弱かったからではなく、PMOが引き受けられる仕事の手前で、優先順位、決定権、報告線の3つが決まっていなかったからです。PMOはこの3つが決まったあとで、決まったとおりに回す機能で、決めること自体を代行してはくれません。PMOを置くかどうかは、この3つをどの順で整えるかが決まったあとの話になります。
プロジェクトの遅れは、珍しいことではありません。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は毎年、東証上場企業とそれに準じる企業のIT部門長に、システム開発の状況を尋ねています。2024年度の調査(回答981社)で、工期が「予定より遅延」したと答えた企業の割合は、100人月未満のプロジェクトで16.6%(回答694社)、100〜500人月未満で33.8%(393社)、500人月以上で43.7%(245社)でした。100人月は、10人が10か月かかる規模です。関わる人と月数が増えるほど、遅れた会社の割合は上がっています。
同じ調査で、工期が遅延したと答えた企業(266社・複数回答)に要因を尋ねると、最も多いのは計画時の考慮不足で47.7%でした。想定以上の現行業務・システムの複雑さが44.4%、社員のスキル不足が42.9%、ベンダーのスキル不足が41.7%、仕様変更の多発が41.0%、開発体制のリソース不足が31.2%と続きます。スキル不足を挙げた企業も4割あり、報告書自体は、スキル不足を挙げる割合が前年から上がっている点に注目しています。ただ、最上位にあるのは、計画の段階で決めきれていなかったことです。仕様変更の多発は途中で決め直したことを、リソース不足は人の割り当てが足りなかったことを意味していて、どちらも担当者個人の努力で埋まる種類のものではありません。
上場企業のIT部門がベンダーと進めるシステム開発の数字なので、社内の複数案件にそのまま当てはめることはできないでしょう。ただ、関わる人が増えるほど遅れやすく、要因の上位が「決めきれていなかったこと」と「人が足りなかったこと」だという構図は、案件の種類を問いません。担当者の能力を疑う前に、この構図のほうを疑う必要があります。
PMOに期待されているのは、おおむね、進捗の見える化、遅れの早期報告、案件間の調整の3つです。どれもPMOの仕事として正しい期待です。ただ、見える化は「何を見るか」が決まっていなければできません。遅れの報告は「何に対して遅れているか」の基準がなければ出せません。調整は「どちらを優先するか」の序列がなければ、両方の言い分を聞いて回るだけになります。3つの仕事はすべて、その手前に決まっていることを前提にしています。自社で試すなら、経営がPMOに期待することを3つ書き出し、各行の右に、その手前で決まっている必要があるものを書いてみてください。右の欄が埋まらない行が、いま欠けているものです。
手前で決まっていなければならないのは、次の3つです。
この3つが決まっていない会社にPMOを置くと、PMOはこの3つを決める仕事を押しつけられます。ところが優先順位は社長にしか決められず、決定権は組織図の問題で、報告線は各案件のオーナーが握っていて、PMOにはどれも決める権限がありません。決められないまま調整役を続けた先にあるのが、PMOが形骸化するのは担当者のせいではないで扱った、報告係になったPMOの姿です。
ここで道が分かれます。PMOを置くかどうかを議論する前に、3つが決まっているかを確かめます。確かめる方法は、数えることです。
3つが決まっているかどうかは、感覚では分かりません。会議に出ている社長ほど「うちは決めている」と感じています。そこで2週間、4つのものを数えます。
最初に、いま社内で走っている案件をすべて一覧にします。ここでいう案件は、期限があり、2つ以上の部門の人が関わるものです。新規事業や基幹システムのような大きなものだけでなく、採用サイトの刷新、評価制度の見直し、展示会出展、補助金の申請といったものも入れます。
一覧に書く項目は6つです。
書き出してみると、社長が把握している案件の数と、実際に走っている案件の数が違うことがよくあります。部門の中で始まった案件は経営会議に上がらず、しかし同じ人の時間を使っているものです。
一覧ができたら、人の軸で並べ替え、主要メンバーの欄に出てきた人ごとに、何本の案件に乗っているかを数えて投入時間を足します。見るのは2つです。1つは、3本以上の案件に乗っている人が誰かです。もう1つは、本来の業務を含めた合計時間が週の労働時間を超えている人が誰かです。情報システムの担当者、経理の課長、そして社長本人が、この両方に該当することが多いはずです。この人たちの時間は、案件の数で割られています。1本あたりに使える時間が減れば、どの案件も進みません。遅れは、この割り算の結果です。
経営者の兼務を規模拡大の課題として重く見ている事業者は、大きい会社より小さい会社のほうに多く見られます。中小企業庁の2025年版中小企業白書に載っている調査で、売上拡大・利益拡大を方針とする事業者に、規模拡大に向けて重視する組織・人材戦略を尋ねたところ、「経営者の兼務解消・権限委譲」を挙げた割合は、売上高10億円未満で9.3%(回答12,784社)、100億円以上で3.1%(508社)でした。白書は10億円未満の事業者について、経営者に集中しがちな職務権限の委譲が必要で、経営者一人の経営体制の限界の克服が課題だと書いています。案件の一覧に社長の名前が何本も出てくるなら、その限界が案件の遅れとして表れている可能性が高いはずです。
次に、直近4回の進捗会議の議事録を読み返し、報告の件数、決定の件数、そして前回の決定のうち次の会議までに動いたものの件数を分けて数えます。
決定とは、誰かが何かを変える、止める、選ぶと決め、それが記録に残っているものです。「引き続き調整します」「来週再度報告します」は決定ではありません。「A案で進める」「期限を3月末に変更する」「Bの人員をCへ移す」が決定です。
4回で決定がひと桁に収まっていれば、その会議は報告会と呼んだほうが近いでしょう。報告会に4部門の部長が毎週集まっている時間は、決めるためではなく、聞くために使われています。決定はあるのに、次の会議までに動いたものが半分に満たないなら、決めたことが現場に届いていないか、届いても動かせていないかのどちらかです。
最後に、一覧の4番、最初の期限といまの期限が違う案件について、その変更を誰がいつ決めたかを確かめます。オーナーか経営が「延ばす」と決めた記録があれば、それは決定です。記録がなく、いつのまにか「4月」が「上期中」になっていたら、それは期限がずれたのであって、延ばしたのではありません。

4つの数字を並べると、3つのうちどれが欠けているかが見えます。
兼務が数人に集中し、その人たちが全案件に乗っているなら、欠けているのは優先順位です。全部を同じ重さで走らせているので、全部が薄くなっています。
決定の件数が少なく、期限が「ずれて」いるなら、欠けているのは決定権です。誰が決めてよいのかが決まっていないため、会議が報告で終わり、期限は誰にも決められないまま動いています。
決定はそれなりにあるのに、決めたことが次の会議までに動いていないなら、欠けているのは報告線です。決定が現場まで届いていないか、現場の状況が決める人まで届いていないかのどちらかです。
3つとも整っているのに回らないなら、そこで初めて、決めたことを追い続ける機能としてのPMOが必要になります。
3つのうち、最初に決めるのは優先順位です。理由は単純で、優先順位が決まらないかぎり、決定権も報告線も設計のしようがないからです。どの案件に人を割くかが決まっていないのに、案件の中の決定権を決めても、その案件に人が来ません。
案件の一覧を社長に見せて「どれが一番大事ですか」と聞くと、たいてい「全部です」と返ってきます。ただ、全部が大事だと言うことは、順番を決めないと言うことと同じです。順番がなければ、限られた人の時間は声の大きい案件から使われ、緊急に見える案件が優先され、新規事業や仕組みづくりのように重要だが緊急でない案件がいつも後回しになります。全部を大事にした結果、大事なものほど進まなくなるわけです。
序列を決めるとき、案件ごとの「重要度」を点数化する方法がよく使われます。ただ、点数は付ける人の立場で変わり、同点が並びます。基準は3つに絞り、序列は1列で書きます。
まず、経営目標への直結度です。今期の売上か利益に直接効くか、来期以降に効くか、効き方が間接的かの3段階で見ます。
次に、期限の外部拘束です。法令の施行日、顧客との契約納期、補助金の実績報告期限のように、社内では動かせない期限があるかどうかです。外部拘束のある案件は凍結の対象から外し、期限を守るのに必要な最小の時間だけを確保して、序列とは別枠で走らせます。
そして、止めたときに失うものです。すでに投じた費用ではなく、止めることで新たに発生する損失を見ます。契約解除の違約金、採用した人の処遇、顧客への約束の撤回などです。すでに投じた費用は、続けても戻ってきません。
3つの基準で並べたら、同率をつくらずに1列にします。1位から3位までに主要メンバーの時間を優先して割り当て、4位以下は凍結します。凍結は中止ではありません。「上位の案件がこの状態になったら再開する」という再開条件と、再開を判断する日を決めて止めることです。再開条件を書かずに凍結すると、担当者は自分の案件が捨てられたと受け取り、静かに続けるかもしれません。
なお、新規事業の凍結や撤退は、序列の判断とは別に、始める前に決めておく基準があります。それは新規事業の撤退基準は、始める前に決めておく——分岐点と判断の順序で扱っています。

序列を決めるのは社長です。ここは委譲できません。各部長に聞けば、自部門の案件が1位になります。それは部長が身勝手だからではなく、部長の評価が自部門の成果で決まる以上、当然の答えだからです。
社長が決めるときも、部長を集めた会議で決めようとすると、その場で決まりません。序列は、社長が一覧を見て一人で仮に並べ、それを部長に見せて反論を聞き、翌週に確定する、という順番で決めます。会議は反論を聞く場であって、序列をつくる場ではありません。
並列で全部走らせる | 序列を決めて上位に集中する | |
|---|---|---|
1本あたりの人の時間 | 案件数で割られ、どれも薄い | 上位3本は厚く、4位以下はゼロ |
期限 | 全部が少しずつ遅れる | 上位は守られ、凍結分は再開日が決まっている |
会議での報告 | 「調整中」が並ぶ | 上位3本の判断事項だけが上がる |
担当者の状態 | 全部に責任があり、どれも終わらない | 自分の案件が上位か凍結かを知っている |
社長の役割 | 全案件の進捗を聞く | 序列と凍結を決め、再開日に判断する |
序列が決まったら、上位の案件それぞれについて、誰が何を決めるかを決めます。第2章で数えた決定の件数が少ない会社では、誰が何を決めてよいかが決まっていないため、会議が報告で終わっています。
決定権の設計は、案件の中で起きる決定を3層に分けるところから始めます。
1層めは、オーナーが一人で決めてよいことです。スケジュール内でのタスクの順序、メンバーへの担当の割り当て、成果物の細部の仕様などです。ここに社長が口を出すと、オーナーは決めなくなるでしょう。
2層めは、案件を横断する会議で決めることです。期限の変更、予算の超過、案件の範囲の増減、ほかの案件の人を借りる必要がある場合です。この4つは、一つの案件の中だけでは決められません。ほかの案件に影響するからです。
3層めは、社長が決めることです。序列の変更、案件の凍結と中止、外部の人や費用を新たに投入するかどうかです。
この3層の切り方は、幹部に権限を渡すときの考え方と同じです。組織図の上では渡っているのに、実態では渡っていない、という状態は案件でも起きます。案件のオーナーに1層めを渡さないまま「任せる」と言っている会社は、社長が全案件の1層めを抱えたまま、案件の数だけ相談を受けることになります。幹部の権限が組織図と実態でずれる構造は、幹部を採っても経営は動かない——外部から来た右腕が機能しない3つの構造で扱っています。
1層めと2層めの境目は、文で決めておきます。「期限が2週間以上ずれる見込みになったとき」「予算が1割を超える見込みになったとき」「ほかの案件の人を借りる必要が出たとき」のように、オーナーがそれを超えたら会議に上げる、という基準を3つに絞って書きます。数字は会社の規模で変えて構いません。大事なのは、オーナーが「上げるべきか」で迷わないことです。
基準が文になっていないと、オーナーは遅れを抱え込みます。抱え込んだ遅れは、次の会議で「調整中」と報告されることになります。
決定権が3層で決まったら、2層めを決める会議を設計します。隔週、45分、議題は判断が必要な事項だけ、というのが基本形です。
状況の報告は会議で話さず、前日までに文書で配っておきます。会議では、各案件から上がってきた「判断が必要なこと」だけを扱い、一つずつ決めます。決めたことは「何を・誰が・いつまでに」の1行で記録に残します。その場で決められないときは、「いつ、何が揃えば決めるか」を決めます。それも決定です。
社長は、この会議には出ます。3層めの判断が必要になった瞬間に、その場で決めるためです。社長が出ない会議で3層めの議題が出ると、結論は「社長に確認」になり、案件は次の会議まで2週間止まったままでしょう。

決める会議ができても、そこに届く情報が実態を映していなければ、決定は誤ります。3つめに決めるのは報告線です。
進捗を「何%」で報告している会社は多くあります。ただ、この数字は上がり方に癖があり、9割まで来ると止まって、残りの1割にそれまでと同じだけの時間がかかることが珍しくありません。進捗率が作業量の比率であって、残っている判断の数を映していないからです。残り1割には、仕様の確定や関係部門の合意のような、作業ではなく判断が集まっていて、判断は誰かが決めるまで進みません。
報告の中身を、進捗率から次の3つに変えます。次のマイルストーンの到達予定日と前回の報告からの変化、判断が必要なことの有無、ほかの案件との人の取り合いです。
到達予定日は、「4月10日に要件確定の予定、前回から変更なし」あるいは「4月24日に変更、理由は関係部門の合意待ち」のように書きます。判断が必要なことがあれば、第4章の基準に照らして、どの層の判断かを添えます。人の取り合いは、同じ人を同じ週に2つの案件が必要としている状態で、オーナー同士では解決できないので2層めの会議で決めます。
進捗率は、あってもよいですが、判断の材料にはしません。
報告は、決定権と同じ3層で組みます。
現場からオーナーへは週次で、タスクの粒度です。ここは各案件の中で回っていればよく、経営は見ません。
オーナーから横断会議へは隔週で、マイルストーンと判断事項の粒度です。前項の3つを、案件ごとに半ページで出します。
社長は隔週の会議に出ていますが、そこで扱うのは3層めの判断が必要になった議題だけです。序列と凍結の見直しは月次に切り出し、上位3本のマイルストーンが守られているか、凍結した案件の再開条件が満たされたか、序列を変える必要があるか、の3点だけを見ます。
報告線を設計するときに、もう1つ決めておくことがあります。遅れを早く報告した人を、責めないことです。
遅れの報告が早いほど、経営に残る選択肢は多くなります。人を足す、範囲を削る、期限を延ばす、凍結する、のどれも選べます。報告が遅いほど、選択肢は減ります。最後には、遅れを取り戻すために人を投入するしかなくなり、それでも間に合わないことが多いのが実態です。遅れの報告に罰がつく会社では、報告が実態を映さなくなり、気づいたときには手遅れになっています。決めておく形は1つで足ります。遅れの報告を受けた会議では、原因を先に聞かず、人を足す・範囲を削る・期限を延ばす・凍結する、の4つのどれを選ぶかから話し始める、と議事の順番に書いておきます。そこから先の立て直しは、プロジェクト炎上の立て直し——社内の人間だけでは火を消せない3つの構造と、発注者が選ぶ初動で扱っている段階の話になります。
優先順位、決定権、報告線の順で整える、と書きました。この順序を飛ばしてPMOやツールを先に入れると、それぞれ決まった形で失敗します。
序列がないままPMOを置くと、PMOは全案件の調整役になります。どの案件も「大事」なので人の取り合いを裁こうとしますが、裁く権限はありません。決定権も決まっていなければ、PMOが決め始めるか、誰も決めないかのどちらかが起きます。PMOが決めれば現場は「PMOが勝手に決めたこと」として扱い、誰も決めなければPMOは「判断が必要です」と上げ続けて、上がった先で止まります。どちらでも、PMOの仕事は各案件の状況を聞いて回り、まとめて報告することだけになり、半年で「いてもいなくても変わらない」と言われ始めます。
進捗管理ツールを先に入れる会社もあります。何を、どの粒度で、誰に上げるかが決まっていない状態でツールを入れると、ツールは報告書の置き場になります。各案件が思い思いの粒度で書き込み、経営は見に行かず、会議ではやはり口頭で状況を聞きます。入力と口頭の二重管理が始まり、現場はそのうち入力をやめてしまうでしょう。
逆に、3つを整えたあとで、PMOを置かない会社もあります。序列があり、決める会議があり、報告線も決まっています。それでも回らないことがあります。
理由は、決めたことを追い続ける人がいないからです。序列どおりに人の時間が使われているかを誰も見ていません。会議で出た決定が実行されたかを、次の会議まで誰も確かめていません。報告が期日どおりに出てこない案件を催促する人もいません。この追い続ける仕事は、社長がやると社長の時間が消え、オーナーがやると自分の案件に甘くなります。ここで初めて、PMOを置く意味が出ます。

3つを整え、それでも追い続ける人が要ると分かったら、PMOを置きます。決めることは3つあります。どの種類のPMOか、誰が担うか、いつ終わるかです。
PMOの置き方は、案件への関わりの強さで3つに分けると整理しやすくなります。各案件に書式や進め方を助言して手伝う支援型、序列・決定の3層・報告線という基準を持ち、そのとおりに回っているかを確かめて外れたら上げる管理型、PMO自身が案件を直接指揮する指揮型です。
3つを整えたあとの会社に要るのは、管理型でしょう。基準はすでにあり、PMOの仕事はその基準どおりに回っているかを確かめることだからです。支援型は、すでに回っている会社で各案件を手伝う形で、追い続ける役割は弱くなります。指揮型は、第4章で決めたオーナーの決定権と衝突します。指揮型を選ぶなら、決定権の設計を先に書き換える必要があります。
PMOを誰が担うかには、3つの道があります。
社内の人が兼務で担う道が、いちばん手前にあります。経営企画や情報システムの担当者が、自分の業務に加えてPMOを持つ形です。費用は掛からず、社内の事情に通じています。ただ、兼務である以上、本業と案件の追いかけのどちらかが薄くなるでしょう。第2章で数えた兼務の集中が、もう1本増えることになります。
設計だけを外の目に見てもらい、運用は社内で担う道もあります。序列の基準、決定の3層、報告のテンプレートを、社内の事情を知らない人に読んでもらい、抜けを指摘してもらいます。費用は限定的で、社内に残るものも多くなります。ただ、追い続ける役割は、社内の誰かが兼務で持つことになります。
残るのが、発注者側の外部PMOを常駐させる道です。社内の利害の外にいる人が、序列どおりに時間が使われているか、決定が実行されたか、報告が期日に出たかを追い続けます。費用はいちばん掛かります。いつ終わるか、終わったときに何が社内に残るかを最初に決めておかないと、外部がいる間だけ回る状態になりかねません。外部が抜けたあとも回るかどうかは、この引き継ぎを最初に設計したかで決まり、従来型のコンサルティングとの違いもそこにあります。伴走支援と従来型コンサルは何が違うのかで整理しています。
外部PMOを入れる場合に、契約の前に決めておくことは3つです。
最初は期間です。90日で、決める会議と報告線を一巡させ、序列の見直しを1回行うところまでを最初の区切りにします。90日で回らないなら、外部の問題ではなく、3つのどれかが決まっていない可能性のほうが高いはずです。
続いて、決定権を渡さないことです。外部PMOは、追い続けて上げる役であって、決める役ではありません。オーナー・横断会議・社長の3層は、外部が入っても動かしません。
最後に、社内に残すものです。案件の一覧、序列とその基準、決定の記録、報告のテンプレート、そして追いかけ方そのものを、90日が終わったときに社内の誰が引き継ぐか、契約の前に名前で決めておきます。
meherが入る場面は、この最後の道が多くを占めます。ご一緒した支援は100件を超え、着手は最短1週間からですが、置く前の3つを整えた時点で社内の兼務で足りると分かる会社も少なくなく、その場合はそれが一番安く、社内にも残ります。設計を外の目で見るだけで足りるなら、実行の主体が社内にあるぶん定着も早いはずです。
プロジェクトが同時に遅れるのは、PMOがいないからではありません。どの案件を先に進めるか、誰が何を決めるか、何をどの粒度で誰に上げるかが決まっていないまま、全部を走らせているからです。
最初の2週間は、数える期間です。走っている案件、兼務、決定の数、次回までに動いた決定、期限のずれ方を記録し、3つのうちどれが欠けているかを見ます。欠けているものが分かったら、優先順位、決定権、報告線の順に決めます。序列は3基準で1列に並べ、上位3本に集中し、4位以下は再開条件つきで凍結します。決定はオーナー・横断会議・社長の3層に分け、上げる基準を3つの文で書き、隔週45分の決める会議を置きます。報告は進捗率をやめ、到達予定日・判断事項・人の取り合いの3つを3層で上げます。ここまで整えて、決めたことを追い続ける人が要ると分かったときに、PMOの種類と担い手と出口を決めます。
いまPMOの導入を検討しているなら、その前に、走っている案件を一覧にするところから始めてみてください。一覧ができた時点で、置くべきものがPMOなのか、序列なのかは、たいてい見えています。置くべきものが序列だったなら、それを決められるのは社長だけです。
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